長居動物病院Blog

2026.09.21更新

グリオーマは、脳や脊髄を支えるグリア細胞(神経膠細胞)から発生
する難治性の悪性腫瘍で、脳の実質内に水がしみ込むように周囲の
正常な脳組織へ浸透しながら広がっていく性質があり、従来の抗癌剤や
放射線治療ではほとんど効果が認められません。
獣医学領域では中高齢のボクサー、フレンチ・ブルドッグ、
ボストン・テリア、イングリッシュブルドッグなどの短頭種に多く認められます。
主な症状としては
1. 頭蓋内圧亢進症状:腫瘍や脳の浮腫(脳浮腫)によって頭蓋内の
圧が高まり、強い頭痛(頭を壁などに押しつける)、吐き気、嘔吐など
現れます。
2. 局所症状(巣症状):できた場所によって異なり、四肢の麻痺、感覚
   障害、痙攣(てんかん発作)などが起こります。
〔診断〕:CTやMRIなどの画像検査を行い、手術などで採取した
組織を調べる「病理診断」で最終的な性質や悪性度を
確定します。
〔治療〕:従来の外科手術や放射線治療および抗癌剤治療を
組み合わせても長期の生存は望めません。
では、西暦2020年代令和の時代になっても打つ手は変わらないので
しょうか。まだ、根本的に治すには至らないものの少しずつ新たな
知見が蓄積され、今日までと違う攻略ポイントが発見されつつあります。
以下、新たな治療戦略を列記していきます。
〔攻略ポイント〕
1. 交感神経を抑制せよ
理由として交感神経の興奮は腫瘍と神経の相互作用によりグリオーマ
の増殖および広範な浸潤において中心的な役割を果たします。
対応する薬剤及びサプリメント
A. ACE阻害剤
B. カンナビジオール
C. DHA・EPA
D. 抗てんかん薬
E. サブスタンスP阻害剤
2. 腫瘍周囲の浮腫を低減せよ
理由として脳腫瘍が大きくなるにつれ周囲の神経組織を圧迫し、
浮腫が生じ、それが原因でてんかん発作が起こるため
それに対応する薬剤としてデキサメサゾン、マンニトールなど
3. 腸内細菌叢を改善し、悪液質から脱却せよ
近年、腸内細菌叢と中枢神経系・免疫系の相互作用は、
腸-脳-免疫連関として全身恒常性制御の中核機構の1つと考え
られるようになってきました。
悪液質進行期には腸内細菌成分の一種であり炎症を惹起することが
知られるLipopolysaccharide(LPS)の血中濃度の有意な上昇が
認められました。LPSは脳内免疫細胞を活性化し、神経炎症を誘導し
ます。腫瘍進展に伴う腸内環境の波紋が、中枢神経系への炎症入力を
増幅する結果となります。
それに対応する治療手段として
A. 週1回ペースでのオゾンガス注腸処置
B. 善玉菌を増やすサプリメント
新ビオフェルミンS錠、オリゴ糖シロップなどを毎日与える
4. 腫瘍への血管新生を阻止せよ
悪性腫瘍が大きくなるためには多量のエネルギーや栄養素を必要とします。
そこで悪性細胞がVEGF(血管増殖因子)を分泌し、血管を新たに作成
して自身に都合が良いように血管網を構築します。
それに対応する治療手段としてサリドマイドがあげられます。
この薬は血管新生抑制作用の他に強力な睡眠導入作用があり、夜に
投薬すれば脳をしっかり休ませることができ、交感神経の興奮を
抑えることができます。
5. 脳の低酸素(酸欠)状態を改善せよ
元々獣医界では短頭種(ボクサー・フレンチ・ブルドッグ・
ボストン・テリア・イングリッシュブルドッグなど)にグリオーマを
始め脳腫瘍が多発することが知られています。頭の形から
脳が酸欠状態に陥りやすく、これが脳腫瘍の悪性化を
加速する原因の1つと考えられます。
それに対応する治療手段として、外出時以外は酸素BOXに入れてあげる。
院長獣医師である東條が治療に関するご相談(有料)承ります。
お気軽にお電話ください。
                   院長  東條 雅彦

投稿者: 長居動物病院

2026.08.08更新

2026年(令和8年)8月現在、外科的手術以外、選択の余地がなかった
犬の胃腺癌の内科治療が1歩前進しました。
治療のラインナップは以下の通りです。
1. ファモチジン 注射or 内服 抗ヒスタミンH2ブロッカー 1日1回
2. マロピタント 注射or 内服 サブスタンスP(知覚神経ペプチド) ブロッカー
  1日1回
3. MEK阻害剤:癌細胞増殖抑制作用、1日1回空腹時内服
4. NGF(Nerve Growth Factor,神経成長因子)阻害剤:イヌ抗NGF
モノクローナル抗体 毎月1回皮下注射
5. オゾンガス注腸処置週1回:腸内環境を変化させ、体の免疫力を
               アップさせる
以上の治療を組み合わせることにより、嘔吐回数が減り、吐きながらも
食事を少量ずつ受けつけるようになり、飼い主様も喜んでおられます。
この治療法に興味をもたれた方は院長獣医師である東條がご相談(有料)
承ります。お気軽にお電話ください。
                                        院長 東條 雅彦

投稿者: 長居動物病院

2026.07.13更新

猫の白血病レトロウイルスが原因で発症したリンパ腫は致死的で
既存の抗癌剤での治療効果は限定的でした。
一方、人間にもレトロウイルスによる長い潜伏期間を経て発症する
ATL(成人T細胞白血病リンパ腫)があり、きわめて予後の悪い
腫瘍であります。
しかし近年、日本発創薬として全く新しいタイプの人間用分子
標的薬である抗癌剤が発売され、ATLをはじめとする悪性リンパ腫
に対し、数百種類に及ぶがん抑制遺伝子の発現を劇的に回復させ
腫瘍細胞増殖を強く抑制する内服薬が販売されました。この薬は
抗体医薬ではなく低分子で猫の白血病ウイルスの遺伝子に対しても
同様に働く可能性が高いと考えられます。
今日まで、猫のリンパ球遺伝子内にレトロウイルスの遺伝子が組み
込まれて発症してしまう猫のリンパ腫に対し有効な治療法がなかった
だけに、期待の持てる内服薬であると考えております。
この新しい分子標的薬に対し、興味を持ち、一度治療相談してみよ
うとお考えの飼い主様は、院長獣医師である東條がご相談(有料)
承ります。お気軽にお電話ください。

                                                            院長 東條 雅彦

投稿者: 長居動物病院

2026.07.13更新

犬の高悪性度T細胞リンパ腫では、ロムスチン(lomustine)を
組み込む多剤併用療法が有効とされ、今日獣医腫瘍学では主流と
なっております。
しかしながら、ロムスチンによる肝機能障害や薬剤耐性が生じた場合
有効な手立てがなく今日に至っております。
近年、人医学領域では、悪性Tリンパ腫細胞の遺伝子に
直接働きかけ、再発難治性Tリンパ腫に対し保険承認された
低分子分子標的薬が発売されました。この内服薬は抗体医薬と異
なり、人間以外の動物種でも有効性があると考えられる構造式を
持っております。
この新しい分子標的薬に興味を持ち一度治療を考えてみようかと
お考えの飼い主様は、院長獣医師である東條がご相談(有料)
承ります。お気軽にお電話ください。
                              
                                                         院長 東條 雅彦

投稿者: 長居動物病院

2026.03.27更新

メルファランとプレドニゾロンによるMP療法に対し、薬剤耐性や
有害事象である血小板減少症の発症が認められた場合、継続
投与ができなくなります。
そこで当院では、レスキュー療法としてサリドマイド内服、デキサメ
サゾン注射、骨融解を伴う痛みに対しては、月1回の注射や内服
でコントロールしております。この治療法に対し、ご相談(有料)、
治療をご希望の方は院長獣医師である東條雅彦と指名の上ご連
絡ください。お待ちしております。

                       院長 東條 雅彦

投稿者: 長居動物病院

2026.02.22更新

悪性腫瘍 例えば、骨肉腫や多発性骨髄腫、悪性組織球症
など骨の原発性あるいは、骨転移に伴う鈍性の痛みは、持続的
に交感神経を刺激し、食欲不振や免疫低下を引き起こし著しく
体力やQ.O.Lの低下を招き、寿命を縮め飼い主様の心労を
深めます。では人や犬で第一選択となっている麻薬製剤はどうで
しょうか。否定するつもりではありませんが、管理が厳しく心理的に
抵抗があるのは事実です。しかし、令和の時代となり、月1回の
注射と内服薬でほどよく疼痛管理が出来るようになり、当院では
骨肉腫や悪性組織球症の患者様より大変感謝されております。
この記事に興味を持たれ現在お悩みの方は、お早めに来院され
ることをお勧めします。担当は院長獣医師東條雅彦とご指名くださ
い。お待ちしております。

                                                             院長 東條 雅彦

投稿者: 長居動物病院

2025.08.09更新

 

犬の胃癌は極めて悪性で、吐血などの症状が出た場合は周辺のリンパ節などに転移しており
2025年現在、外科手術による切除ができない症例は内科治療がほぼ皆無でありました。
しかし、医学・獣医学は日進月歩であり人の医学では外科手術による切除が不能の症例に対し
以前より潰傷性大腸炎に使用されていた治療薬が有効なことが、第一相試験で証明されました。
この薬は獣医医療でも使用されており、比較的安価であることから他の制吐剤・抗潰傷剤と併用して
用いることができます。

 

この記述に興味を持たれたり、現在治療法がないと診断された方は御来院、御相談(有料)、承ります。
院長獣医師東條と御指名のうえ御予約ください。

 

院長 東條 雅彦

投稿者: 長居動物病院

2024.07.08更新

犬の悪性組織球肉腫は、免疫細胞の一種である樹状細胞由来の悪性新生物で、大型犬である

バーニーズマウンテンドッグ、フラットコーテッドレトリバー、ラブラドルレトリバー、ゴールデンレトリバー、ウェルシュコーギーなどに多く認められる腫瘍です。

中年齢からの発症が一般的ですが、若齢で発生することもあります。組織球肉腫は、急速に広がり転移を起こす悪性度の高い腫瘍で、貧血を起こす血球貧食性組織球肉腫と言われる特殊な型もあります。

初発部位としては、脾臓・肺・中枢神経・骨髄・皮膚・皮下などが挙げられ、転移先として肝臓・肺がもっとも多く認められ、検査方法として主に次の方法が挙げられます。

・触診を含む身体検査
・血液検査
・細胞診(腫瘍に針を刺し採取した細胞を顕微鏡で観察する検査)
・胸部レントゲン検査
・腹部超音波検査
・手術による病理組織検査
・CT、MRI検査

 

治療法として
1.手術
発生部位が限定的であれば、外科手術で病巣を摘出し病理診断をしたのち化学療法CCNU(ロムスチン、内服薬、海外薬)、ACNU(ニムスチン、注射薬、国内薬)など3週間隔で投与するのが一般的です・

2.放射線治療
発生部位が限定的で、外科手術を望まないのであれば何回かにわけて放射線照射をしたのち手術後と同様に、化学療法を行う方法です。

3.化学療法
組織球肉腫が全身播種し、外科手術や放射線治療の適応外である場合は、CCNU、ACNUなどのアルキル化剤と呼ばれるがん細胞のDNAのコピーができないようにする抗癌剤が第一選択となります。
しかし、ほとんどの場合数カ月で薬剤耐性ができてしまい打つ手がないのが現状です。
ところが人医療の進歩に伴い、MEK阻害薬と呼ばれる細胞の異常増殖を引き起こすMEKタンパク質の活性化を阻害することで、がん細胞の増殖を抑える内服薬、抗がん剤が出現しました。

現在内服中のバーニーズマウンテンドッグの飼い主様からの問診では、CCNUに対し薬剤耐性ができてしまったが、この新しいタイプの抗がん剤を使用したところ、胸部レントゲンで肺野がきれいになり、食欲も増し、元気も出てきたという著しい効果が見られているとの報告を受けました。

 

今まで打つ手がなかっただけに、獣医師としては喜ばしい限りです。

費用面などの問題はありますが、御来院、御相談、承ります。院長獣医師東條と御指名のうえ御予約ください。

院長 東條 雅彦

投稿者: 長居動物病院

2023.09.04更新

 

グリオーマ・グリオブラストーマ(GBM)神経膠種・神経膠芽種は非常に悪性度が高く、現行治療(放射線や抗がん剤など)では治療困難な脳腫瘍で、人間だけでなく犬や猫にも認められます。

2023(令和5年)に出たNatureという世界トップレベルの学術雑誌の中で、グリオブラストーマの腫瘍細胞は、神経細胞と接続することで細胞増殖が活性化していることがわかりました。

その結果、シナプス(神経細胞同士が連絡する接点)形成などに重要なタンパク質である
Thrombospondin-1(Tsp-1)の発現が上昇していることが発見されました。


そこで、Tsp-1阻害剤であるGabapentin(ガバペンチン)を使用すると腫瘍細胞の増殖を抑制できることが明らかになりました。
今回の発見は、脳腫瘍に伴う脳機能障害が腫瘍拡大による単純な圧迫による脳浮腫だけではなく、腫瘍と神経のシナプス形成による脳機能ネットワーク改変による障害や腫瘍増殖も原因であることがわかりました。
ここに登場するガバペンチンはすでに犬のてんかんや神経疼痛を抑える薬として、日本国内でも販売されています。

 

獣医界のみならず、人間の脳腫瘍の治療にも大きなインパクトを与える可能性も秘めています。
もし、獣医の大学病院や二次病院の画像診断で神経膠種と診断され、手の施しようがないと宣言されたら、是非一度院長獣医師東條雅彦までご連絡ください。

投稿者: 長居動物病院

2017.11.14更新

犬や猫の扁平上皮癌は、皮膚や口腔内、特に高齢化した動物に多く見られます。
外科手術や放射線治療で治療できれば、それにこしたことはありませんが、全身麻酔下でおこなう必要があり、体に受けるダメージも部位によっては、大きいものがあります。
では、内科的な治療法はないのでしょうか。
時代の進歩とともに注射薬、内服薬、外用薬が選択肢として表れました。
①注射薬
ルペオール注射液
癌細胞の核内遺伝子NF-kBに働き、癌による炎症疼痛を抑える働きをします
ビタミンA注射液
未熟な扁平上皮の癌細胞を角化させる働きをします。

②内服薬
Palladia(トセラニブ)
チロシンキナーゼと呼ばれる細胞分裂に働く信号をブロックすることにより、扁平上皮癌細胞を縮小させます。
ピロキシカム
本来非ステロイド系抗炎症剤でありますが、プロスタグランディンE2という炎症物質であり、免疫抑制物質を抑制することにより癌細胞の増殖を抑制します。

③外用薬
セラミド
本来化粧品にも使用される皮膚のうるおい成分でもありますが、癌細胞をアポトーシス(死亡させること)させる作用があることが近年発見されました。
皮膚表面だけでなく、口腔内にも使用できます。現在、当院では犬と猫の口腔内扁平上皮癌に使用しております。

これらの治療法についての質問、お問合せは院長、獣医師東條がうけたまわります。お気軽にお電話ください。
院長不在の際は、こちらからご連絡させていただきます。

投稿者: 長居動物病院

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