新しい診療治療法

2023.09.05更新



グリオーマ・グリオブラストーマ(GBM)神経膠種・神経膠芽種は非常に悪性度が高く、現行治療(放射線や抗がん剤など)では治療困難な脳腫瘍で、人間だけでなく犬や猫にも認められます。
2023(令和 5 年)に出た Nature という世界トップレベルの学術雑誌の中で、グリオブラストーマの腫瘍細胞は、神経細胞と接続することで細胞増殖が活性化していることがわかりました。

その結果、シナプス(神経細胞同士が連絡する接点)形成などに重要なタンパク質であるThrombospondin-1(Tsp-1)の発現が上昇していることが発見されました。

 

そこで、Tsp-1 阻害剤である Gabapentin(ガバペンチン)を使用すると腫瘍細胞の増殖を抑制できることが明らかになりました。
今回の発見は、脳腫瘍に伴う脳機能障害が腫瘍拡大による単純な圧迫による脳浮腫だけではなく、腫瘍と神経のシナプス形成による脳機能ネットワーク改変による障害や腫瘍増殖も原因であることがわかりました。
ここに登場するガバペンチンはすでに犬のてんかんや神経疼痛を抑える薬として、日本国内でも販売されています。

 

獣医界のみならず、人間の脳腫瘍の治療にも大きなインパクトを与える可能性も秘めています。
もし、獣医の大学病院や二次病院の画像診断で神経膠種と診断され、手の施しようがないと宣言されたら、是非一度院長獣医師東條雅彦までご連絡ください

投稿者: 長居動物病院

2021.08.06更新

ワンちゃんの肝臓癌の約70%は肝細胞癌であります。

肝細胞癌は腫瘤型結節型びまんの型の3つのタイプがあります。これらのうち腫瘤型は外科手術で摘出が可能であれば治療としてはベストだと思います。

ですが、複数の肝葉を侵している結節型や、散らばっているようなびまん型は外科手術が不可能です。

それでは黙って放置するしかないのでしょうか?

 

近年、腸内細菌叢の研究が急速な進歩をとげ、高脂肪食の取り過ぎや肥満になると、腸内でグラム陽性菌(染色液で青っぽく染まる細菌)が増殖しグラム陽性菌の細胞壁成分であるリポタイコ酸が腸肝循環である門脈を経由し、肝臓に至り肝臓腫瘍部でPGE2(プロスタグランディンE2)と呼ばれる炎症物質が多く産生されることがわかりました。

このPGE2は、炎症を起こすと同時に、抗腫瘍免疫(癌細胞を攻撃する免疫細胞、例えば、キラーTリンパ球やNKTリンパ球というような細胞性免疫)を抑制し、肝癌細胞を大きくしてしまうようなことが起こります。

 

以上の事実から、肝細胞癌を大きくしない為に2つの攻撃ポイントがあることがわかりました。

その1,肥満を解消し、腸内のグラム陽性菌数を減少させる。

その2,肝細胞癌が産生するPGE2(プロスタグランディンE2)をブロックすることにより、抗腫瘍免疫を復活させ再びキラーTリンパ球やナチュラルキラーTリンパ球を活性化させ、肝細胞癌を攻撃させること。

 

その1については、犬の食事療法や運動することによる肥満解消、整腸剤や抗生物質、オゾン注療法などによるグラム陽性菌数を減らす方法がとれること。

その2については、2021年現在、日本国内で犬の治療に用いられている。一部の非ステロイド系抗炎症剤を使用しPGE2を減らす方法が考えられています。

 

犬の肝臓癌の治療について、興味のある方は院長獣医師の東條雅彦にご相談、お電話ください。不在の場合こちらより連絡させていただきます。

院長 東條 雅彦

投稿者: 長居動物病院

2019.08.13更新

口腔内メラノーマ(悪性黒色腫)は、老犬に多く見られ上顎、下顎骨切除や放射線治療など全身麻酔下での生体にダメージが大きい治療にもかかわらず、周辺リンパ節や肺、脳などに転移し、治療の甲斐なく短命な結果に終わります。

 

もともとメラノーマ(悪性黒色腫)は抗原性が高く(宿主の免疫細胞に発見されやすいこと)本来なら免疫細胞の標的となり破壊されてしまうはずなのに、なぜどんどん大きくなってしまうのでしょう。

それは、癌細胞が宿主の免疫細胞から身を守るため表面にバリアとなる分子を発現(防弾チョッキを着る)したり様々なサイトカインと呼ばれる液体分子を出す(戦闘機が妨害電波を出す)ことにより免疫細胞を無力化してしまうからです。

分かりやすく説明すると、いくらアガリスクやAHCC、コルディG、イペットSなど免疫増強サプリメントだけを与えても自動車で例えると、アクセルを踏み続けてもブレーキを解除しなければ車は前に進みません。

やがてエンジンが壊れ車が廃車(すなわち体力を消耗して悪液質となり死に至る。)となってしまいます。

 

そこで当院では、アクセル、すなわち免疫を増強させるために注射薬(ルペオール、犬用インターフェロン、丸山ワクチン)を二週間に一回皮下注射し、ブレーキを解除するため分子標的剤のトセラニブ、非ステロイド系抗炎症剤やシメチジンを用いて治療を行い大きな副作用も認められずほぼ全頭に、元気食欲増進、腫瘍の縮小が見られ飼い主さまから好評をいただいております。一部の症例の使用前、二週間後の顔写真を掲載しておきます。

 

ブログ用

 

ブログ用

 

私に最短二週間長くても一か月の治療時間をください。それで結果がでなければ、いさぎよくこの治療から手を引きます。

なお、この治療については院長獣医師の東條雅彦にご相談、お電話ください。不在の場合こちらより連絡させていただきます。

 

院長 東條 雅彦

投稿者: 長居動物病院

2019.06.25更新

多発性骨髄腫は、骨髄内でリンパ球の中の形質細胞が腫瘍化し、増殖した疾患で重度になると、骨融解が起こり、ベンスジョーンズ蛋白尿です。

重度になると、骨融解が起こり、ベンスジョーンズ蛋白尿を排出し、貧血や好中球減少症、血小板減少症、高カルシウム血症などが認められ、正常な免疫グロブリン濃度が抑制されている場合は、膀胱炎など二次的に感染症を引き起こしているケースが見られます。また、骨融解により椎骨が押しつぶされ、不全麻痺や急性の麻痺が認められたり、虚弱、はこう、麻痺、疼痛が見られこともあります。

 

<治療>

標準治療としては、メルファラン、プレドニゾンを使用し、6週間後でも反応率が50%以下である場合は、メルファランをクロラムブシルに変更する必要があります。しかし、標準治療に反応しない症例があるのも事実で、骨融解による骨折や疼痛を緩和しなければ、Q.O.Lが下がり、元気食欲も起こりません。

 

そこで当院では、治療に反応しなかった症例に対し、

 

1.骨融解を阻止するため、ゾレドロン酸の点滴静注

2.腫瘍化した形質細胞を破壊するため、サリドマイドの内服とデキサメサゾンの注射

 

で、緩解を目標に治療をしています。

 

なお、この治療に対してご希望があれば、院長 東條雅彦までご連絡ください。不在の際は、こちらからご連絡させていただきます。

 

投稿者: 長居動物病院

2017.11.14更新

犬や猫の扁平上皮癌は、皮膚や口腔内、特に高齢化した動物に多く見られます。
外科手術や放射線治療で治療できれば、それにこしたことはありませんが、全身麻酔下でおこなう必要があり、体に受けるダメージも部位によっては、大きいものがあります。
では、内科的な治療法はないのでしょうか。
時代の進歩とともに注射薬、内服薬、外用薬が選択肢として表れました。
①注射薬
ルペオール注射液
癌細胞の核内遺伝子NF-kBに働き、癌による炎症疼痛を抑える働きをします
ビタミンA注射液
未熟な扁平上皮の癌細胞を角化させる働きをします。

②内服薬
Palladia(トセラニブ)
チロシンキナーゼと呼ばれる細胞分裂に働く信号をブロックすることにより、扁平上皮癌細胞を縮小させます。
ピロキシカム
本来非ステロイド系抗炎症剤でありますが、プロスタグランディンE2という炎症物質であり、免疫抑制物質を抑制することにより癌細胞の増殖を抑制します。

③外用薬
セラミド
本来化粧品にも使用される皮膚のうるおい成分でもありますが、癌細胞をアポトーシス(死亡させること)させる作用があることが近年発見されました。
皮膚表面だけでなく、口腔内にも使用できます。現在、当院では犬と猫の口腔内扁平上皮癌に使用しております。

これらの治療法についての質問、お問合せは院長、獣医師東條がうけたまわります。お気軽にお電話ください。
院長不在の際は、こちらからご連絡させていただきます。

投稿者: 長居動物病院

2017.11.14更新

犬の乳腺腫瘍の約50%が悪性であり、そのうちの約半分つまり全体から見ると約25%がリンパ節、肺、脳などに転移するきわめて悪性度の高い乳腺癌と言われているものです。
これまでは、有効な抗癌剤はなく、はっきり申し上げてお手上げの状態でした。
しかし、最近、海外文献より人間の糖尿病治療に使用し、約50年の歴史のあるメトホルミンという薬が犬の乳腺癌に反応し、縮小することが判明しました。メトホルミンは血糖値を下げる力はマイルドで低血糖になることはまずありません。
この薬は乳腺癌細胞の増殖を抑え完治を目指すものではなく、共生をめざすものです。しかし、すべての症例に効果があるとは限りませんので、まず1か月間内服してみてください。反応すれば、乳癌が小さくなっていくのが実感できると思います。

これらの治療法についての質問、お問合せは院長、獣医師東條がうけたまわります。お気軽にお電話ください。
院長不在の際は、こちらからご連絡させていただきます。

投稿者: 長居動物病院

2017.11.14更新

老犬に多い悪性メラノーマは、口腔内や爪に発生するものが多く、発見された時には既に肺やリンパ節、脳などに転移しています。外科手術や放射線、抗癌剤などにより治療しますが、体にうけるダメージが大きく、飼い主さんや老犬にとってつらいものがあります。
そこで当院ではその他の治療選択肢として、次のオプションがあります。
これらの治療法は、悪性メラノーマが患者さんの免疫力によって、コントロールされるという背景に基づいています。

①患者さんの免疫力をアップさせる方法
・犬のインターフェロン(インターDOG)
・丸山ワクチン(アンサー、ゼリア新薬工業)
・シメチンジン(本来胃潰瘍の薬であるが、免疫調節作用を持つ)

②患者さんの免疫にかかているブレーキをはずす薬(人では、オプジーボが有名になりました)
・Plladia(トセラニブ)という分子標的薬
・ピロキスカム(非ステロイド系抗炎症薬だが、プロスタグランディンE2を抑えて転移を抑制する)
・ルペオール注射(悪性腫瘍におけるNF-kB)と呼ばれる細胞核内の炎症を引き起こしている分子を抑える働きをする。
・stiripentol(スチリペントール、人の小児科における抗てんかん薬)乳酸脱水素酵素阻害剤、メラノーマでは乳酸が免疫細胞の侵入を阻害するので、これをブロックする薬です。

これらの治療は単独で行うものではなく、各種組み合わせて治療いたします。
これらの治療法についての質問、お問合せは院長、獣医師東條がうけたまわります。お気軽にお電話ください。
院長不在の際は、こちらからご連絡させていただきます。

投稿者: 長居動物病院

2017.08.01更新

扁平上皮癌は、最近、分子標的剤のトセラニブや非ステロイド系の抗炎症剤により、コントロールが少しずつできるようになりました。

これらの内服薬に加えて、医療用コラーゲンの内服や化粧品などに使われるグリコシルセラミドにより、上皮系腫瘍細胞がアポトーシスという細胞の自殺スイッチが入り、縮小するという新たな治験がみられるようになりました。

ご興味のある方は、お電話してください。

なお、この治療に関しては、院長が承ります。

投稿者: 長居動物病院

2017.02.21更新

放射線治療は、照射した部位に留まらず、転移巣など離れた病巣に対しても効果を発揮し、がんが縮小や消滅することが以前から知られていました。

これを「アブスコパル効果」というのですが、放射線の専門医でもほとんど遭遇したことがないほど発生頻度が低いのが現状でありました。

その後、腫瘍免疫学の研究が進み、放射線をがんに照射するとがん細胞が死に、死んだがん細胞から免疫の刺激作用があるタンパクやがん抗原などが放出されることがわかりました。

その物質をマクロファージや樹状細胞が吸収し、腫瘍を特異的に攻撃する細胞障害性Tリンパ球が遠隔転移のがん細胞も攻撃します。これが「アブスコパル効果」のメカニズムと考えられています。

放射線治療と免疫療法で「アブスコパル効果」が起こるのは、2つの理由が考えられます。

①弱かった免疫を補完して免疫を高める。

②免疫を抑制しているブレーキを外して、免疫が働くようにする。

当院では、①に対しては、α‐ガラクシドセラミド感作樹状細胞とγδT腫瘍攻撃型リンパ球静脈点滴治療に加えて、犬インターフェロンと丸山ワクチンの混合皮下注射治療法

②に対しては、人間のオプジーボの代わりに、トセラニブ(palladia)と呼ばれる分子標的薬やピロキシカムという、抗腫瘍性抗炎症剤と免疫調節作用のあるシメチジンやDHA&EPAなどの抗腫瘍性ω3脂肪酸を処方しています。

【適応腫瘍症例】

1、外科切除不可の肺がん

2、外科切除不可の肝細胞がん

3、外科切除不可の副腎がん

4、外科切除不可の脳腫瘍

5、外科切除不可の腎がん

6、治療に反応しない膀胱がんや前立腺がん

7、全身転移を起こした悪性腫瘍

などを想定しています。

 

放射線治療が最後の砦と言われる時代は終わりました。大学病院やセンター病院で放射線治療を受ける予定の飼い主さんは、是非その前に採血し、自身の樹状細胞やリンパ球を培養しておくことをおすすめします。

放射線治療後は、必ず一時的に白血球数が減り、免疫がダウンします。

なお、この治療に関しては、院長が承っております。

詳しくはお電話にてお尋ねください。院長不在の時はこちらからご連絡させて頂きます。

投稿者: 長居動物病院

2017.01.13更新

バーニーズマウンテンドックやフラットコーティッドレトリバーなどに多い悪性組織球肉腫は、樹状細胞と呼ばれる自己の免疫細胞が腫瘍化し、全身に転移を起こす極めて悪性度が高い腫瘍であります。

現在のところ、CCNUと呼ばれる抗がん剤が主たる治療で3週間に1回の投薬が行われております。しかし、非常に短期間で薬剤耐性が起こります。

そこで、当院ではトセラニブと言われる分子標的薬とステロイド剤の併用により、大きくなった腫瘍塊を小さくし、その上でガンマTリンパ球と呼ばれる殺腫瘍性の高い免疫細胞を患畜さんの血液より培養し、点滴にて体に戻す治療を行っております。

この治療に関しては院長にお問い合わせください。

院長不在の時には折り返しお電話させて頂きます。

投稿者: 長居動物病院

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長居動物病院 電話番号06-6693-4801

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